ザハロワ、オシポワ、ムンタギロフ……世界を股にかけて活躍するトップダンサーが一堂に会し、華麗な饗宴を繰り広げた「スーパースター・ガラ」がこの秋、ふたたび東京に戻ってくる。
スヴェトラーナ・ザハロワは、踊るたびに表現の深みを増し観る者の魂を揺さぶる『瀕死の白鳥』をふたたび披露。加えて、本公演の芸術監督を務めるパトリック・ド・バナと『Wind Games』を踊るという。『Wind Games』は、ド・バナがチャイコススキーのヴァイオリン協奏曲全曲に振付け、チャイコフスキーの美しい音楽と響き合う幻想的な宇宙を舞台に生み出した傑作バレエ。その白眉とも言うべき第2楽章のパ・ド・ドゥが、今回、ザハロワによってどんな進化を遂げるか、楽しみなところだ。
前回はエドワード・ワトソンを相手に現代作品の稀代の表現者として観客を圧倒したナタリア・オシポワは、マリインスキー・バレエの貴公子ウラジーミル・シクリャローフと組む。これまで『マノン』、『ジゼル』、『マルグリットとアルマン』といったドラマティックな作品をロイヤル・バレエなどで踊ってきた2人。「お互いを瞬時に感じ取って、高いクオリティの舞台を生み出せる私たちの共演をウラジーミルはいつも喜んでくれる」とオシポワも語る。彼らが披露する『マノン』に期待が高まるばかり。超絶技巧の応酬となること必至の『海賊』も必見だ。
現在クラシックの踊り手として世界最高峰と言っていいワジム・ムンタギロフ。彼とパリ・オペラ座バレエのドロテ・ジルベールとの共演が今回実現するのにも注目だ。デュポン芸術監督時代、ムンタギロフが『ジゼル』でオペラ座に客演した際に2人は共演、大きな話題を呼んだ。伸びやかで音楽性豊かな踊りを見せる2人の久しぶりの共演は今回どんな化学反応を生んでくれるだろうか。そして、この5月、惜しまれながらもパリ・オペラ座に別れを告げたミリアム・ウルド=ブラムも出演。現在フランス・バレエのエレガンスをもっともよく伝えるバレリーナの1人と言っていいウルド=ブラム。アデュー公演で絶賛された彼女の『ジゼル』が東京でも観られるのはうれしい。相手役のバクティヤール・アダムザンは、最近「ボッレ&フレンズ」に出演し、その華麗なテクニックで注目されている。日本初登場。ルグリも期待する新たな才能だ。 「スーパースター・ガラ」は、今回もたくさんの感動と興奮を届けてくれる、見逃せない公演となりそうだ。
新書館「ダンスマガジン」編集委員 浜野文雄